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SS#017(single stories)
 
■つくつく
 
 ななちゃんは、川の土手でつくしをみつけました
 絵や写真ではみたことがありますが、本物ははじめてです。
 ななちゃんはそのつくしをお母さんにあげました。
 
「もうそんな季節ね」
 
 お母さんはそういって笑いました。
 
 ななちゃんはその夜、夢をみました。
 朝起きて、お母さんに夢の話をしました
 
「おかあさん、あのね。
 夢のなかで広い広い野原にいってね。
 そこにはつくしが何本も何本も何本もはえててね。
 いっぱいいっぱいつくしを取ってね。
 このくらい取ったんだよ」
 
 そう言ってななちゃんは両手を大きくひろげました。
 お母さんが笑っていいました。
 
「そんなに取ったなら、つくしのつくだにがたくさんできるわね。
 お母さんが夢の中で、つくしのつくだにを作ってあげるわね。
 そうしたらご飯と一緒に食べられるわ」
 
 ななちゃんは『つくしのつくだに』なんて、初めて聞きました。
 
「『つく・つく』っていうのが面白いね」
「そうね、面白いわね」
「昨日のつくしも『つくつく』にできる?」
「1本だけじゃちょっと難しいわね」
 
 お母さんがそう言ったので、ななちゃんは土手をいっしょうけんめい捜してつくしを10本みつけました。
 
「お母さん、これなら『つくつく』つくれる?」
「じゃあやってみましょうか」
 
 ななちゃんはお家に帰って、お母さんと一緒につくしの帽子を取りました。
 つくしのまわりにぐるっとついているハカマもとりました。
 それからお母さんは塩をいれた水で、つくしをよく洗いました。
 それからお鍋につくしとしょうゆをいれてことこと煮ました。
 
「さあ、できました。春の味」
 
 夕飯のとき、10本のつくしでできた『つくつく』をみんなで食べました。
 ななちゃんが4本、お母さんが3本、お父さんが3本たべました。
 
 初めて『つくつく』を食べたななちゃんは、
 
「春の味っておしょうゆの味なんだ」
 
 と思いました。
 

end.(初出2011/04/09「希望のポケット童話」・2012/08/05サイト再録)

 
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