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フライディと私シリーズ第二十四作
083◆マリッジ・グリーン (直接ジャンプ  1  2  3 
 
 
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4.
 恋人の横顔を助手席で楽しく眺めていたチップはふと視線を窓の外に向け、道沿いに建てられた看板に目を走らせた。チップは今、行先と目的を知らされないままキャットの運転する車でどこかへ連れられていく最中だ。
 先頭を走る車のウィンカーが光ったのに続いて次の車のウィンカーが点滅し、キャットもまたウィンカーレバーを無言で押し下げた。一番前の車を運転しているのはエドで、助手席にはチップと同じようにして連れてこられたベスが乗っている。その後ろを走るのはエドの警護官が乗った車、しんがりを務めるのがキャットが運転するチップの車だ。
 
――なるほど。これが君達の秘密か」
 
 三台の車がたどり着いたのは、何もない場所にぽつんと建った倉庫か体育館のような大きく窓のない建物。
 壁に描かれているのは白と黒の格子柄の旗。フォーミュラカーを模した、躍動感あふれるマシンの絵。
 
「スリックトラックサーキットとはね」
 
 車を降りた皆は合流し、まずは警護官が先頭に立って建物の入口をくぐった。そのすぐ後に続くのはエドとキャットだ。残されたチップとベスは後に続いて良いものか迷い顔を見合わせた。
「何も聞くなと言われてついて来たけど、これから何が始まるのか知ってる、チップ?」
 おそらくベスは自分が今どこにいるのかも漠然としか分かっていないだろう。チップにとってもここは初めての場所だが、何が始まるかは予想がついていた。答える声が自然と弾んでいた。
「多分エドは僕と決闘をするつもりじゃないかな」
「決闘?!」
 驚いたベスがチップを見た。チップは人の悪そうな笑みを返す。
「分かりやすく言えば君にいいところを見せるためのイベントだね。貴婦人に勝利を捧げるのは騎士道物語の伝統だろう。エドに贈る袖かスカーフは持ってる?」
 からかわれたベスは怒った顔をしたが頬が赤く染まっていた。しかしすぐその顔を曇らせた。
「お願いだから危ないことはしないでね」
「君はまるでひよこを守る雌鶏みたいだよ、ベス。エドを臆病者(チキン)に育てるつもりかい?」
 チップはふざけた口調で、ベスの不安を笑い飛ばした。
 もしこれがレース用カートでの本格的な競争だったとしたらチップもエドを止めた。自分はともかく結婚式を控えたエドがやることじゃないだろうと。しかしスリックトラックなら話は別だ。チップも実際に走るのは初めてだがスポーツというより遊びの要素が多い競技の筈だ。どんなスポーツにも百パーセントの安全はないが、衣類の巻き込みなどにさえ注意すればまず怪我の心配はないだろう。
「二人とも、一緒に来て」
 真剣な顔をしたキャットに呼ばれ、チップとベスも皆に遅れて『本日貸切』と書かれた建物の入口をくぐった。
 
 一瞬、ゴムとオイル、それに排気ガスの匂いがした。
 入ってすぐの場所はスポーツカフェで、天井近くに取り付けられたスピーカーはレース用エンジンを噴かす甲高い音を周囲に響かせている。壁側には鍵つきロッカーがずらりと並び、一番奥の受付のカウンターではオフィシャルと書かれた帽子をかぶった男性が緊張した面持ちで立っていた。
 広い構内の残りほぼ全てがオーバルのサーキットコースで占められていた。路面はボウリングのレーンのように磨かれて光り、エンジンをデチューンしたカートは最初から互いにぶつかることを前提に緩衝材で囲まれ、運転席の背後を守るパイプフレームがカウルの上にはみ出していた。
 端的に言えば、ここは真剣に遊ぶためにつくられた場所だった。
 
5.
「チップ。勝負しよう」
 エドが何の前置きもなしに言った。
「受けるよ。理由を訊いた方がいいか?」
「僕がチップに勝ちたいからだよ」
 そう言ったエドの、敵意ともとれる視線にチップはひるむどころか破顔して答えた。
「いいね、そういうの大好きだ。ベスが見てるからって手加減はしないからな」
「ううん。ベスは一緒に走るんだよ」
 兄弟の熱いやりとりにキャットが水を差す。
「私?!」
 婚約者の雄姿に見とれていたベスは、いきなり出た自分の名に驚いて声をあげた。
「そう。スリックトラックは台数が少ないとつまらないし、私がベスに勝ちたいから」
「私?」
 ベスは同じ言葉を繰り返す。エドは口をはさまず二人を見守る。そしてチップは――
「勝って、チップを略奪するの」
 ――キャットの決意を聞いて、身体を二つに折って笑い転げていた。
 
 ベスは未だに訳がわからないままでいた。
「どういうこと? 第一チップは私のものじゃないわよ」
「でも、婚約してた」
「形だけよ」
「それでもっ! 二人が婚約してたところに割り込んだのは私だから」
 チップは笑いすぎて滲んだ涙を手で拭い、キャットの肩に腕を回して会話に割り込んだ。
「ベス、僕からもお願いするよ。どうかキャットの挑戦を受けてやってくれないか。君に失うものはないだろう」
「ない、けど、テニスではいつもキャットが勝ってるじゃない?」
 今ここで勝負をする意味があるのか、とベスは首をひねる。
「勝てるもので挑戦したら駄目なんだよ。エドだってバイオリンで勝負すれば楽に勝てるけどそれはしないでしょ」
 口をとがらせて訴えるキャットの頬を、チップが軽くつまんだ。
「僕のフルートを聴いたこともないくせに決めつけるなよ」
「ぜえったいエドの方が上手だね。だってフライディにフルート吹いてって誰も言わないじゃない」
「その口は僕に憎まれ口を叩くより他の使い道はないのか。君こそフルートでも覚えたらどうだ?」
 目の前で始まったくだらない喧嘩に巻き込まれないよう一歩退いたベスは、いつの間にか横にきていた婚約者を見上げた。
「どういうことか分かる、エド?」
「分かるような分からないような……。実は僕がエリザベスを勝ち得たって自分を納得させたいんだって言ったら、キャットが私もベスに勝たなくちゃって言いだして、こんなことになっちゃったんだ」
「よく分からないけど何となく分かったわ」
 二人は目を合わせてうんうんと頷き合った。ベスが不意に微笑み、そっと自分の手をエドの方に伸ばす。
「よく分かったわ」
 そう囁いたベスは自分の指をエドの指に絡めてぎゅっと握った。
 エドがクラッカーなら、頭からぱーんと音をたてて紙吹雪と色とりどりのテープが飛び出しているところだった。
 
 チップとベスはスリックトラックが初めてなので、まず最初に練習の時間が取られた。
 コース自体は単純な楕円形でテクニカルなコーナーはひとつもない。しかし路面の摩擦抵抗が低いため雪道を走る時のように、アクセルを踏み込みすぎるとタイヤが空転してカートは思わぬ方向へ滑り出す。上級者になるとそれをうまく活用してアクセルのオンオフでコースを自在に走ることもできるのだが、さすがのチップも一周目は豪快にクラッシュしまくった。意外なことにベスの方がカートをまっすぐに走らせていた。ただしスピードは非常に遅い。
「そろそろいいかな?」
 チップがベスに声をかけた。
「いいわ。これ以上練習しても上手くなるとも思えないし」
「君にとっては何の得もない勝負だと思うけど、手を抜くなよ」
「言われなくても。あなたこそ本気で走ってよ」
「もちろんだよ。僕の恋人を独占してこそこそと企んだ報いをうけさせてやる」
 チップがこぶしを作って自分の手のひらにぶつけた。それを聞いてふとベスが自分の婚約者を見やる。エドとキャットは非常に近い位置に立ち真剣な顔で話し合っていた。この二人は本当に仲がいい。
 ベスの心に、種火のような小さな緑の火が点った。
 
6.
 四人はスタートラインに並んだ四台のカートに近づいて乗り込んだ。スタート位置でもめたりはしなかった。シートベルトを装着し、アクセルに足を乗せてハンドルを握り、スタートのグリーンランプが点灯する瞬間を待つ。
 音と光の合図と共に四台は一斉にスタートした。
 先頭を切ったのはチップ、すぐ後ろにエドが続く。少し遅れてキャットが続いた。ベスも慎重にその後を追う。
 コーナーに入ったところで外側にふくらんだエドのカートがチップのカート後方に接触する。がつんと揺れたチップのカートはボウリングの玉のようにつるつると床を滑って外側の壁に後部をぶつけた。練習でさんざんクラッシュしたチップはすぐにハンドルを回してコースに戻ろうとしたが、その間にエドだけでなくキャットにも抜かされていた。
 慎重なハンドルさばきで横を通過しようとしているベスに、チップが笑いながら呼びかけた。
「僕達は練習の時もっとぶつけ合って慣れておくべきだったね」
「話しかけないで」
 突き放すベスにチップは構わず続ける。
「君も誰かにぶつけてみるといいよ。こんな感じで、ほら」
 言いながらチップは追いついたベスにカートの側面を軽く当て、自分の進路からどかす。
「信っじられない! チップ――
「もたもたしてると周回遅れで後ろからトップに抜かれるよ。それも手だけどね」
 意味ありげな言葉を残してチップはコーナーを抜けていく。ベスは口の中で誰にも聞かせられない言葉を吐き出し、アクセルを強く踏み込んで憎らしいいとこの背中を追いかけた。
 キャットは器用に後ろを振り返り、迫ってくるチップを認めてハンドルを左右に回し蛇行運転で進路を妨害した。
「ロビン、君は誰の味方なんだ」
「今日はエド。なんだかフライディの邪魔をしたい気分なの」
「味方だった美女に裏切られるなんて、まるで映画の主人公になったみたいだよ!」
 エンジンの音に消されないよう叫び合いながら、チップは容赦なくキャットの背後につけて前にはみ出した角に自車をぶつける。キャットのカートはくるりと反転し、笑うチップを正面からねめつけた。
「自分がいつも主人公だと思わないでねっ!」
「怒った顔もキュートだよ。お先に」
 人を怒らせる天賦の才をもつチップは置き去りにした恋人に投げキスを飛ばし、撃墜王をめざしてエドを追う。置き去りにされたキャットは目の据わったベスが迫ってくるのを見てあわててレースに戻ろうとした。
「キャット、どいてちょうだい」
「駄目だよ! 私ベスに勝つんだから」
「何としても私はあの憎らしいいとこに、この車をぶつけてやるのよ」
 キャットは頭の中ですばやく計算した。トップがコースを十周した時点でレースは終わる。ベスが先行してもチップとぶつけ合うならキャットにはまだベスを抜き返すチャンスはある。
――でも駄目っ」
 キャットはコントロールを失わないようアクセルを調整してカートをコースへ戻す。ベスよりも先にコーナーに入り、テイルを滑らせながら出口へ向かう。
「今日はベスとは敵同士だから!」
 そう言ったキャットにコーナーで置いていかれたベスは目をぱちぱちさせた。ちらりと斜め後ろを振り返り、先頭の二台と半周ほど差が空いたのを見てまた慎重にアクセルを踏み込んでコーナーの出口をめざす。
 
 スタートからトップを守っていたエドは、いきなり不快な衝撃を受けて車体のコントロールを失った。後ろから追い上げてきたチップに追突されたのだ。あっという間にコツを掴んだ兄の勘の良さに、エドは苛立ちをつのらせる。
 しかしエドはこういう事態を想定しての練習も積んでいた。アクセルを少し戻してハンドルを回し、チップが頭を突っ込もうとしたすきまを潰すように外側の壁にむけて幅をよせていく。
「このカートの悪いところは、バックミラーがついてないことだな」
 楽しげな声が、エドが寄ったのとは逆の側からエドにかけられる。まったくもってチップの言うとおりだが、素直に認めるのもしゃくにさわる。
「このカートの良いところは、腹の立つ相手をつきとばせることだと思うっ、よっ」
 エドは自分の首位を守るかわりに攻めの姿勢で大きくハンドルを切った。ぶつけられたチップのカートがコース内側の壁に接触して止まる。エドもまた反動で外側の壁に接触したが後悔はしていない。これこそがエドのやりたいことだった。
 エドがライバルに向かって猛々しく吠えた。
「ずっと、こうやってチップを突き回したいと思ってたよっ!」
 チップは手のひらでハンドルを回しながらちらりと後ろを確かめ、自分のカートが後続車の進路を塞がないよう少し端に避けてから吠え返した。
「ああ僕もだ! よくも僕の恋人をあちこち連れ回してくれたなっ!」
 コースの端と端で威嚇しあう兄弟の真ん中を、キャットがすうっと横切った。
「いっちばーん」
 得意気に言い去るキャットを追いかけてチップが走り出す。その背中を睨みつけエドが少し遅れて追う。
 
 三人が追い追われるコースの先に、周回遅れでのろのろと走るベスの後ろ姿が見えてきた。キャットはベスを避けるよう、コースのやや内側寄りに進路を変えた。チップがすぐ後を追いかける。
 ベスの顔がこちらを向いた気がした。
 キャットが横を抜ける直前、ベスのカートは大きく真横を向いた。
「うわわっ!」
 キャットは頭からベスのカートの横腹に突っ込む。そのキャットに後ろからチップが追突した。ビリヤードの玉のように三台のカートがコースに見事に散らばる。追いついたエドはまず婚約者の安否を気遣う。
「エリザベス!」
「エドは行って」
 ベスの目はただ一人エドを見つめていた。エドは頷いて障害物を避けゴールを目指す。
「大丈夫、ベス?」
 一番遠くまで飛ばされたベスにキャットが呼びかける。ベスは朗らかに答えた。
「気分は最高よ。憎らしいいとこと敵を妨害できたんですもの」
 チップが声をあげて笑った。
「僕らの先祖が平和主義者じゃなかったのは歴史が証明するとおりだが、君とは確かな血の繋がりを感じるよ。君といとこで嬉しいよベス」
「私はちっとも嬉しくないわ」
 憎々しげに言い返されたチップは、急に芝居がかった仕草で安っぽい天井板を見上げて言った。
「ああ、我が初恋の薔薇は未だ鋭く僕の胸を刺す!」
 キャットは釣り上げられた魚のように口をぱくぱくさせた。ベスはうろたえてキャットとにやにやするチップを交互に見つめ、大きく息を吸って叫んだ。
「あなたのそういうところ、大っ嫌いよっ!」
 ベスは顔を真っ赤にしてハンドルを回し、アクセルを踏み込んでレースに戻った。
「ロビン、どうぞお先に」
 チップは片手を上げてコースを指し、キャットに再スタートを促す。
――後で色々訊くからねっ」
「もちろんだ。何でも訊いてくれ」
 キャットの後ろ姿を愛しげに見つめてから、かなりの先行を許したエドの現在位置を横目で確かめチップもアクセルを踏み込んだ。
 
7.
 このままエドが逃げ切るかと思われたレースは次のラップでまたも混戦状態となっていた。単独クラッシュに複合クラッシュが重なってキャットとベスはもう自分が何周したのか分からない。ともかく周回遅れだったベスに後ろから抜かれない限りキャットの勝利は堅い。
 エドとチップはさすがに自分の周回数を覚えていたが、抜きつ抜かれつを繰り返しているので最後までどちらが先にゴールするかは分からない。ベスとキャットから妨害をうけないよう、チップは前を行く時も後ろを追う時もエドとあまり離れないようにしていた。お互い余裕があれば車体をぶつけあって嫌がらせをするのも忘れていない。
「エリザベスの仇だっ」
「いつまでもしつこいんだよっ、自分の婚約者をどう扱おうと僕の勝手だろっ」
「大事にできないならっ、婚約なんかしなければよかったんだっ」
「ベスだって僕を大事にしてなかったぞっ」
「そんなの自業自得じゃないかっ」
「お前なんかゴクとマゴクに齧られろっ」
 いつの間にか兄弟王子のレースの目的はお互いを罵って車体をぶつけることになっていた。
 もうゴールラインが見えているのに、どちらもこの機会を逃せばもう二度と本音(と車)をぶつけあう機会はないかもしれないと思うのか、単純に自分がやられたところで終わるのが嫌なのか。
 邪魔をし合う二人の走行ラインは子供の落書きのようにぐねぐねと無駄に延びていた。
 二人に追いついてすり抜けできるコースを捜すキャットもまた、この諍いと無関係ではいられなかった。
「ロビン、知らんぷりで通り過ぎるつもりか?」 
 責めるチップに、キャットは部外者の顔で冷静に指摘した。
「二人とも山羊が角突き合いしてるみたいだよ」
 そんなことを言えばどうなるか、キャットももういい加減に覚えてもいいころなのだが。
「人を悪しきものみたいに言うなよ」
「そんなこと言ってないでしょうっ、もうっ」
 荒ぶるチップにぶつけられキャットが憤慨して声をあげた。その横をすいっと通る影がある。
「あっ!!」
 チップとキャットの声が重なった。
 低次元の争いから先に抜け出したのはエドだった。
 ゴールラインまで、エドを邪魔するものはもう誰もいない。
 我に返ったキャットはライバルの姿を捜す。エドの走行ラインをなぞるようにベスがキャット達の横を通過し二人を抜いていった。
「もおおおっ、フライディのせいだからねっ!」
 キャットは取り乱して叫び、ベスを追って走り出す。
 チップは後ろからキャットを呼び止めようとし……ファンファーレにその声をかき消された。
 さっきまで流行の曲を大音量で流していたスピーカーから、録音された音声がゼッケンナンバー4が一着でゴールしたとアナウンスした。勝負には負けたがレースを存分に楽しんだチップは、にやにやしながら皆の待つゴールをめざした。
 
「フライディのばかっ!」
 チップを迎えた恋人の第一声はそれだった。ちょんとつつけば泣き出しそうな顔をしている。そのキャットに、チップは人の悪そうな笑顔を返した。
「馬鹿呼ばわりした僕から指摘されるのはしゃくだろうけど君の勝ちだよ、ロビン」
 キャットが目を丸くする。
「ベスが周回遅れだったの、君は忘れてるだろう」
 キャットの表情がぱあっと明るくなった。両手を高く上げてぴょんぴょんと跳ねて叫ぶ。
「やったぁーっ! やったぁーっ!!」
 その様子を目を細めて愛しげに眺めるチップに、エドがベスを腕に抱いて近づいてきた。
「僕の勝ちだ」
 エドはチップが今まで一度も見たことのない、自信に満ちた顔で宣言した。
「うん、お前の勝ちだ」
 チップはからかいも、まぜっかえしもせず素直に負けを認めた。この晴れやかな二人の姿だけを見れば、ついさっきまで罵り合っていたとは誰も信じないだろう。
「僕の弟は誠実で、温和で、必要な時は勇敢にもなれる男だ。エドと結婚する君は幸せ者だ」
 頬を染めたベスは小さく頷いて目を伏せ、エドに身を寄せた。エドの腕に力がこもる。
 
 幸せという題をつけた絵のような二人を眩しげに見たチップは、その後ろで跳ねまわる恋人に笑いながら声をかけた。
「おーいロビン、僕を山羊呼ばわりしたけど、君だって子山羊みたいに跳ね回ってるじゃないか!」
 
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