ショートショート スポーツカー
■ロビンとスポーツカー
ロビンは十七歳になってすぐ運転免許を取った。動体視力と反射神経がいいから、初心者にしてはずいぶん上手く運転する。
「僕の車も運転できるかなぁ? クラッチが重たいし少々癖があるけど」
僕がそう言うと、ロビンは胸を張ってきっぱりと答えた。
「できるよっ。私もう免許持ってるんだから、運転できない車なんてない」
そして不意ににこりと笑った。
「だからフライディが疲れたら、今度から私が運転してあげるね」
……ねえ、ロビン。僕は君の意地っ張りでプライドの高いところと、どこまでも優しい聖母みたいなところと、どっちが一番好きかまだ決めかねているんだ。
きっと跳ね馬みたいなスポーツカーもそんな君におとなしく従って、君はいいサーブを決めた時と同じ笑顔でやすやすと乗りこなすんだろうね。
■フライディとスポーツカー
フライディはスポーツカーが大好きだ。どうしてなのって聞いたら
「格好良くてパワーがあって癖があって、周囲から抜きん出て目立つ。普段の用事にはあまり役に立たない分、純粋に運転を楽しめる。いざという時にはちゃんとドライバーの身を守ってくれる。……何よりも夢と憧れの結晶だろ、スポーツカーって」
って答えた。
それってフライディそのものじゃないの、と思ったけどそんなことを言うとまた調子にのりそうだから言わなかった。
……そしたらフライディが「君はやすやすと乗りこなしそうだね」なんて言うから、余計に言えなくなった。
end.(2009/03/29)
Copyright © P Is for Page, All Rights Reserved. 転載・配布・改変・剽窃・盗用禁止