ツーリングを少々番外編◆百合は綺麗なだけじゃないんです
総務部は花見の席でも無礼講とはいかない。
各グループを回りビールを補充する珠緒は、すっかりできあがったおじさん達に絡まれていた。
「たまちゃん、ここで一緒に飲もうっ!」
「この高嶺の花っていうより野の百合って感じがいいんだよなー」
「そうそう。『ああ綺麗だなー、健気だなー』ってなー」
「誰にも踏まれず咲き続けてくれよー」
なんとなく上から目線の誉め言葉と続く笑い声に、珠緒は内心むっとしながらその場を離れた。
「百合は綺麗なだけじゃないんですっ! 根っこは食べても美味しいんですっ!」
一人そう言って抱え上げたビールのカートンが、珠緒の腕から抜かれた。
「そういうこと言わない。食べていいのかって誤解されるよ。……ビール貰ってく」
大里がいなくなってからきっちり三秒後、珠緒の頬は周りの酔客と同じ色に染まった。
end.(2012/04/16ブログ初出・2019/02/19サイト転載)→番外編「すれちがい」へ続きます
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